「自動車大国 中国」に米国は警戒 古森義久
中国の新車販売が世界第1位になったというニュースが大きく伝えられた。2009年の新しい自動車の販売台数で中国がそれまでトップだった米国を抜き、世界首位に立ったというのだ。
この新たな展開を抜かれた側の米国はどうみるのか。 実は米国の自動車業界はもちろん、政府も議会もかねて中国の自動車産業の急成長には真剣な関心と懸念を向けてきた。
「中国製の自動車」というと、自動車先進国の米国でも日本でも、イメージはまだまだすっきりとはしない。中国製は労働集約型の付加価値の低い製品が大多数という年来の実態に基づく思いこみがまだ平均だといえよう。
ところが米国側の主要機関が中国を新興の自動車大国としてとらえ、中国の自動車産業の隆盛は国家あげての高度技術の大振興策の成果として米国の経済や安全保障にまで荒波をぶつけてくるとみているのだ。
米国側のそんな考察は議会の政策諮問機関「米中経済安保調査委員会」の一連の公聴会や年次報告書で詳細に表明されている。
ちなみに同委員会は連邦議会の有力議員が推薦する専門家12人が主体になり、米中間の経済関係が米国の国家安全保障に与える影響を調べる。
テーマごとに他の専門家から証言を聞き、分析する作業を一年中、続ける。米国官民の多数ある中国研究機関でも最大規模の組織である。
この委員会の08年の報告書は中国の「科学技術大国」の側面に光をあて、「中国はすでに自動車、航空宇宙機器、情報技術(IT)、電気通信などの生産では急速な発展を達成した」と自動車産業をその筆頭にあげていた。
そして中国の自動車生産について以下の趣旨を伝えていた。
中国は06年にすでに米国と日本に次ぐ世界第3の自動車生産大国となった。08年には年間1000万台を生産し、09年には世界第1、12年には1200万台となろう。01年からの8年間で生産台数は5倍に増えた。
国民1000人当たりの台数が06年には10台だったから、国内市場は想像できないほど巨大である。中国車の輸出も04年には8万台だったのが3年後には60万台へと飛躍した。
性能の差から米国や日本ではまずみないが、ロシア、イラン、アフリカ諸国などへの中国車の輸出は盛んだという。
中国の自動車産業は当初はほとんどフォルクスワーゲンやGMというような欧米大企業を誘致し、中国の国営企業との合弁で技術や資本を導入することで発展してきた。その結果、外国企業側がブランド、デザイン、技術などを管理し、中国側の独自の競争力を抑えてきた。
だがおもしろいことに数年前からこの構図が変わり、中国企業が独自の技術やデザインで車を製造するようになり、国内での販売も拡大した。06年には中国の国内車市場の27%を中国企業が占めた。
中国政府は自国の車産業界が欧米企業への依存から解かれ、自主的に排気や安全性の国際基準を達成することを奨励し、税制面でも優遇を与えている。中国車を欧米や日本にも売り込む野望なのだという。
だが米中経済安保調査委員会がとくに注視しているのは中国の自動車産業のこうした自主志向の急成長の背後にある野心的な国家計画である。
同委員会の報告書は中国政府が06年に発表した「科学技術開発中長期計画」の「50年までには全世界の科学と技術の最高リーダーとなることを国家目標とする」という宣言に警戒の目を向けていた。高度技術製品の貿易では米国はすでに中国に対し年間千数百億ドルもの赤字を記録する。
科学技術の開発への投資でも中国に圧倒されている。中国のそうした科学技術での世界覇権への前進は自動車産業の隆盛が予兆なのかもしれないというのが米国側の懸念のようなのだ。
杜父魚ブログの全記事・索引リスト
この新たな展開を抜かれた側の米国はどうみるのか。 実は米国の自動車業界はもちろん、政府も議会もかねて中国の自動車産業の急成長には真剣な関心と懸念を向けてきた。
「中国製の自動車」というと、自動車先進国の米国でも日本でも、イメージはまだまだすっきりとはしない。中国製は労働集約型の付加価値の低い製品が大多数という年来の実態に基づく思いこみがまだ平均だといえよう。
ところが米国側の主要機関が中国を新興の自動車大国としてとらえ、中国の自動車産業の隆盛は国家あげての高度技術の大振興策の成果として米国の経済や安全保障にまで荒波をぶつけてくるとみているのだ。
米国側のそんな考察は議会の政策諮問機関「米中経済安保調査委員会」の一連の公聴会や年次報告書で詳細に表明されている。
ちなみに同委員会は連邦議会の有力議員が推薦する専門家12人が主体になり、米中間の経済関係が米国の国家安全保障に与える影響を調べる。
テーマごとに他の専門家から証言を聞き、分析する作業を一年中、続ける。米国官民の多数ある中国研究機関でも最大規模の組織である。
この委員会の08年の報告書は中国の「科学技術大国」の側面に光をあて、「中国はすでに自動車、航空宇宙機器、情報技術(IT)、電気通信などの生産では急速な発展を達成した」と自動車産業をその筆頭にあげていた。
そして中国の自動車生産について以下の趣旨を伝えていた。
中国は06年にすでに米国と日本に次ぐ世界第3の自動車生産大国となった。08年には年間1000万台を生産し、09年には世界第1、12年には1200万台となろう。01年からの8年間で生産台数は5倍に増えた。
国民1000人当たりの台数が06年には10台だったから、国内市場は想像できないほど巨大である。中国車の輸出も04年には8万台だったのが3年後には60万台へと飛躍した。
性能の差から米国や日本ではまずみないが、ロシア、イラン、アフリカ諸国などへの中国車の輸出は盛んだという。
中国の自動車産業は当初はほとんどフォルクスワーゲンやGMというような欧米大企業を誘致し、中国の国営企業との合弁で技術や資本を導入することで発展してきた。その結果、外国企業側がブランド、デザイン、技術などを管理し、中国側の独自の競争力を抑えてきた。
だがおもしろいことに数年前からこの構図が変わり、中国企業が独自の技術やデザインで車を製造するようになり、国内での販売も拡大した。06年には中国の国内車市場の27%を中国企業が占めた。
中国政府は自国の車産業界が欧米企業への依存から解かれ、自主的に排気や安全性の国際基準を達成することを奨励し、税制面でも優遇を与えている。中国車を欧米や日本にも売り込む野望なのだという。
だが米中経済安保調査委員会がとくに注視しているのは中国の自動車産業のこうした自主志向の急成長の背後にある野心的な国家計画である。
同委員会の報告書は中国政府が06年に発表した「科学技術開発中長期計画」の「50年までには全世界の科学と技術の最高リーダーとなることを国家目標とする」という宣言に警戒の目を向けていた。高度技術製品の貿易では米国はすでに中国に対し年間千数百億ドルもの赤字を記録する。
科学技術の開発への投資でも中国に圧倒されている。中国のそうした科学技術での世界覇権への前進は自動車産業の隆盛が予兆なのかもしれないというのが米国側の懸念のようなのだ。
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